東京地方裁判所 昭和62年(特わ)1671号 判決 1987年8月31日
国籍 フィリピン
住居 不定
無職 F・G・R
西暦一九四八年一一月四日生
(別添写真の女)
主文
被告人を懲役三年に処する。
未決勾留日数中三〇日を右刑に算入する。
東京地方検察庁において保管中の大麻草(昭和六二年東地領第三四一〇号の一ないし一二、一七ないし二八、三二ないし四三、四七ないし五八)を没収する。
理由
(罪となる事実)
被告人は、法定の除外事由がないのに、通称A及びKらと共謀のうえ、大麻を本邦に輸入しようと企て、大麻取締法にいう大麻である大麻草約一万〇五〇〇・二七グラム(主文第三項掲記の大麻草はその一部である)を木製屏風内に隠匿したうえ、これを福島県郡山市内のH方の被告人(ただし、M名義)に宛てた航空貨物として、昭和六二年六月六日ころフィリピン共和国マニラ国際空港から中華航空第八一二便に搭載させて発送し、途中台北中正国際空港において同航空第〇一六便に積み替えのうえ、同月七日、東京都大田区羽田空港二丁目五番六号所在の東京国際空港に到着させ、情を知らない航空関係作業員をしてこれを同航空機から取り降ろさせて本邦内に持ち込み、もって大麻を輸入するとともに、同日、右航空関係作業員をしてこれを同区羽田空港二丁目五番五号所在の国際空港上屋株式会社羽田出張所保税上屋に配送搬入させたうえ、同月八日、同区羽田空港二丁目五番六号所在の東京税関羽田出張所において同税関係員に対しその引き取り方を申し出て、もって税関長の許可を受けないで右大麻草を輸入しようとしたが、同税関係員に発見されたため、その目的を遂げなかったものである。
(証拠の標目)《省略》
(法令の適用)
被告人の判示所為中大麻草を本邦に持ち込み輸入した点は刑法六〇条、大麻取締法二四条二号、四条一号に、税関長の許可を受けないで大麻草を輸入しようとしてその目的を遂げなかった点は刑法六〇条、関税法一一一条二項、一項に該当するが、右は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として重い大麻取締法違反の罪の刑で処断することとし、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役三年に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数中三〇日を右刑に算入し、主文第三項掲記の大麻草は判示関税法違反の罪に係る輸入制限貨物等であるから関税法一一八条一項本文によりこれを没収し、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 川合昌幸)
<以下省略>